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大阪高等裁判所 昭和56年(行コ)24号 判決

京都市中京区壬生御所之内町四五番地の一

控訴人

京都木平林産企業組合

右代表者代表理事

田中康夫

右訴訟代理人弁護士

安田健介

腰岡實

京都市中京区柳馬場二条下ル

被控訴人

中京税務署長

人西操

右指定代理人

前田順司

松本捷一

城尾宏

木下昭夫

杉山幸雄

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  控訴人の昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分法人税について、被控訴人が昭和五〇年一月三一日付でなした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(いずれも、異議決定による一部取消後のもの)を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  当事者双方の主張及び証拠関係は、次に付加するほか原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  控訴人の主張

控訴人は、昭和四八年一一月一日に田中康夫から本件商品取引を引継いだ。すなわち、右引継の事実は、控訴人の理事会議事録(甲第一四号証)及び中井繊維京都出張所長米田耕耘の昭和四八年一二月二五日作成にかかる覚書(甲第二〇号証)によって明らかである。

二  被控訴人の主張

控訴人は、昭和四八年一一月一日当時理事会を開く状況にはなかったし、その主張の引継をする理由もなかった。

右引継は税金対策上の仮装にすぎない。

控訴人は、田中康夫が控訴人には余裕資金がないということで本件商品取引を始めたが、その後資金に詰まり、他方控訴人は建売住宅の代金の回収により資金余裕ができたので右取引を引継いだと主張するが、建売住宅の代金の回収は、田中康夫が本件商品取引を開始する以前の昭和四八年四月二〇日に終了して、その利益は確定していたのであり(もっともその額は僅小三六七万円であり、控訴人の資金余裕の根拠となすに足らない。)、また、田中康夫が追加証拠金を支払う余裕がなくなったとしても、その定期預金等を解約するなり、あるいは控訴人又は銀行からの借入金でその資金をつくることは十分できたのであるから、前記主張は理由がない。

三  証拠関係

1  控訴人

(一) 甲第二七号証の一ないし四、第二八、二九号証、第三〇ないし第三五号証の各一、二、第三六号証、検甲第一号証の一ないし四(昭和五七年四月田中康夫撮影の中井繊維京都出張所事務室の写真)

(二) 証人後藤徳市、同米田耕耘、控訴会社代表者田中康夫

(三) 乙第一〇ないし第一二号証の原本の存在及び成立は認める。

2  被控訴人

(一) 乙第一〇ないし第一二号証

(二) 右甲各号証の成立は認める。検甲号各証が中井繊維京都出張所事務室の写真であることは認めるが、撮影者・撮影月日は不知。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正、付加するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1(一)  原判決一四枚目表一〇行目「証人」の前に「原審及び当審」を加え、一一行目「同田中智子」を「原審証人田中智子」に改め、「原告」の前に「原審及び当審での」を加え、一二行目「もので」を「部分も」に改める。

(二)  同一六枚目裏九行目「副う」の次に「原審及び当審での」を加え、一二行目「証人」の前に「原審及び当審」を加え、一七枚目表一行目「同」を「原審証人」に改め、同行目「原告」の前に「原審及び当審での」を加える。

(三)  同一八枚目表二行目「証人」の前に「原審及び当審」を、同九行目「作成されていること」の次に「及び通常業務用には使用しない個人用の銀行印を押印していること」を加え、同一〇、一一行目「可能性が強いこと、」を削り、同所に「のではないかとの疑問を完全には払拭しきれないのであるが、さらに、その記載内容は、控訴人より出金されていると思うので、領収書はできる限り控訴人名義で発行できるよう、研究のうえ処理する。というものであって、中井繊維にとっては証拠金がいずれから出捐されているかは事柄の性質上推測の域を出ないものであって、米田耕耘も当時田中康夫が控訴人の資金を流用しているのではないかとの印象を持っていたのであるから(当審における同人の証言)、右記載内容をもって、中井繊維が控訴人主張の取引引継ぎの申入れを受け、これを認めていたとの主張を肯認するに足る的確な証拠となし難いこと、」を加える。

(四)  同一九枚目表三行目「原告」の前に「原審及び当審での」を加え、四行目「よれば、」の次に「法廷に提出された右理事会議事録(甲第一四号証)は写であるというのに、その原本の所在は不明であり、そもそも後記のとおり控訴人が田中康夫から本件商品取引を引継がねばならない理由がないことのほか、」を加える。

(五)  同一九枚目裏三行目「述べたこと」の次に「いずれも成立に争いのない乙第一〇ないし第一二号証及び原審における控訴人代表者尋問の結果により認められる、建売住宅代金の回収が控訴人の資金余裕の理由とならず、田中康夫が必ずしも追加証拠金調達が不可能ではなかった事実よりして、控訴人主張の時期に取引の引継ぎをしなければならない理由が認められないこと」を加える。

2  原審証人三田勝美の証言中には、中井繊維京都出張所事務室に奥の部屋がある如く供述する部分もあるが、当審証人米田耕耘の証言によると、同出張所事務室は一部屋があるにすぎないものの、入口部分が鍵形になっており、入口部分とその奥の部分とから構成されていると認められるので、右供述部分は奥の別個の部屋を指すものとは必らずしもいえない。又、同証人の証言中には、乙第四号証の写を後藤徳市に交付したか又は右後藤が写を作成したかの如き供述部分があるところ、右部分は原審及び当審証人後藤徳市の証言にてらし、不正確であるとしても、当審証人米田耕耘の証言によると、乙第四号証の二項の記載、すなわち、田中康夫の取引につき昭和四八年一二月六日総精算があり、その後同年一二月中旬過に電話で右田中から中井繊維に対し、「企業組合の取引にしてもらいたい」との申立があり、これに対し、税務署と相談していただきたい旨を中井繊維は右田中へ伝えたこと自体は事実であることが明らかであるから、証人三田勝美の証言及び乙第四号証を排斥すべき事由となし難く、他に控訴人の主張を肯認するに足りる証拠はない。

二  以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林定人 裁判官 惣脇春雄 裁判官 山本博文)

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